幸福のためのロジカルシンキング

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ロジカルシンキング(論理的思考)という言葉が当たり前のように使われるようになって久しいです。特にビジネスにおいては、その必要性が広く理解され、ロジカルシンキングを鍛えることがスタンダードになっている一方で、一部からは”とはいえ理屈だけじゃない”といった意見を聞くこともあります。 

このような意見が出てしまうのは、論理的に思考することを感情を殺すことのように捉えていたり、言いたいことを我慢することのように捉えてしまっているからです。論理 VS 感情のような、単純な二項対立で捉えてしまっているとも言い換えられます。 

しかし、ロジカルシンキングというのは本来的には感情と共存するし、むしろあなたの感情を達成するためのツールです。ロジカルシンキングをうまく使うことで、あなたの満足度が高まり、ひいては幸福度が上がるはずなのです。 

今回は、そもそもロジカルシンキングとは何か、なぜロジカルシンキングがもてはやされるのか、ロジカルシンキングのコツ、そして論理と感情の関係性について書いていきます。 

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ロジカルシンキングとは 

ロジカルシンキング(Logical Thinkng)とは、文字通り論理的思考、つまり論理的に物事を考えることです。論理的思考というと、一般的には主張の筋が通っていること、合理的であることを指すと理解されますが、より広い意味を指す使い方もされます。具体的には、以下の通りです。 

主張に筋が通っている 

これが最も基本的、かつ誰もが思い浮かべるロジカルシンキングの意味です。論理的という言葉自体がそもそも、理に適っていることを指しますから、これがロジカルシンキングの根幹であるとも言えます。 

具体的には、矛盾や飛躍がなく、首尾一貫していることです。例えば“我が社ではコンプライアンスが最重要事項です”と言っている企業で法に背く行為が横行していたり、社会的責任を放棄する行いがあれば、それは矛盾しているということになります。また、”高齢化のおかげで医療系企業の業績は伸び続ける”という意見があるとすると、これは論理が飛躍しています。高齢化=医療需要増までは繋がるとしても、それが必ずしも医療業界全体の業績の伸長にはつながらないからです。 

偏見に囚われていない 

ロジカルシンキングの次の意味は、偏見や先入観に囚われていないことです。ほとんど全ての人が、偏見や先入観を持って生きています。偏見や先入観が全く無いと、世の中わからない物だらけで生きるのが辛くなってしまいますから、それ自体は生きる上で不可欠だと思っています。ですが、仕事をする上では偏見のせいで判断を誤ることも多く、偏見を排除した思考が求められます。 

例えば、”顧客が求めているのは何よりも品質。我が社の製品はハイスペックであり、顧客ニーズを満たしている”という考え方は、スペック=品質=顧客ニーズという偏見をもとに形成されている可能性があります。また”価格はとにかく安い方が売れる”というのも偏見の代表例です。高価格に設定することによるブランディングという可能性が抜け落ちています。 

対象を要素に分解できる 

例えばあなたの会社の利益額について考えるとき、漠然と考えるのではなく、”売上 – 原価 – 経費”という風に利益を要素分解することで見えてくることがたくさんあります。これが対象を要素に分解できるということであり、ロジカルシンキングの重要な要素の一つです。 

因果関係を理解できる 

因果関係を理解できることも、ロジカルシンキングの大切な要素です。例えば製品の販売が落ちた時に、その原因がどこにあるのか考える際、因果関係を正しく把握できないと、判断を見誤ります。価格競合力がなかったのか、製品の性能に問題があったのか、顧客ニーズに合わなかったのか、業界の構造的な問題なのか、正しい因果関係を理解する必要があります。 

優先順位をつけられる 

優先順位をつけることも、ロジカルシンキングの要素です。抱えている仕事が多い場合を想定しましょう。どの仕事も、やる意味はあり、その意味で”合理的”だったとしても、どの仕事から手をつけるのか、どの仕事はやらないのかまで含めて合理的に考えなければ、判断を誤ります。費用対効果やリソースの配分を”なんとなく”ではなくロジカルに考える必要があります。 

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フレームワークを使って考える 

上述したような”ロジカルシンキング”を達成するために有用なツールがフレームワーク(枠組み)です。”なぜ商品の販売台数が落ちているのか”という問いに対して、全く白紙の状態から正しい答えを導くのは容易ではありません。そんな時に、考える筋道を作ってくれる有用なツールがフレームワークであり、例えば以下のようなものがあります。 

5W1H 

where, who, when, what, whyとhowを指すことは多くの人が知っているでしょう。人に質問をするときに5W1Hを使いましょうと言われることも多いですが、それがなぜかわかりますか?それは、全く白紙の状態から自分で質問を考えるより、より網羅的に情報を聞くことができるからです。5W1Hを使わなかったことで”理由(why)を聞き忘れた”とか、”どうやって(how)実行するのか分からなかった”といったことを防げるのです。 

MECE 

Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、いわゆる”漏れなく、ダブりなく”のことです。例えば顧客分析をする際に、顧客全体を①10代-20代②30代-40代③50代-60代という3つのグループに分けたとすると、これは“MECE“になっていません。なぜなら10代未満と70代以上が含まれていないからです。また、例えば”大学受験生”を①高校生②予備校生という2つのグループに分けたとすると、高校と予備校両方に通っている人が重複していますので、MECEになっていません。 

上述した対象を要素に分解するという作業をするときに、MECEという概念は非常に重要なのです。 

3C 

マーケティングのフレームワークです。3CはCompany(自社), Customer(顧客), Competitor(他社)を指します。上述の問い”なぜ商品の販売台数が落ちているのか”を考える際、こういったフレームワークを使わないと、どうしても”Company(自社)”の視点を中心に物事を考えがちです。そう言った時に、顧客や競合他社の視点で分析することでこれまで見落としていた要素を発見できる可能性があるのです。 

4P 

これもマーケティングのフレームワークで、Product(製品), Price(価格), Place(販路), Promotion(販促)を指します。詳細を話すと長くなるのでザックリ説明しますが、マーケティングを考える際に、何を売るのか、いくらで売るのか、どこで売るのか、どのような販促活動をするのかという要素に分けて考えることで、より包括的な戦略を練るためのフレームワークです。 

SWOT 

経営戦略のためのフレームワークで、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威) の4つのカテゴリーに分けて分析するものです。強みと弱みは自社の内部環境に関する分析です。一方機会と脅威は外部分析で、機会というのは例えば自社は何もしていないのに業界全体が伸びているとか、輸出企業が円安のおかげで業績を伸ばしているようなことを指します。 

以上、いくつかフレームワークの例を紹介してきました。フレームワークは、それ自体が必ず正解を導くものではありませんが、使うことでロジカルシンキングを手助けしてくれるツールなのです。 

ロジカルシンキングのメリット 

以上、ロジカルシンキングがどういうものなのかを説明してきました。その概要についてはなんとなく理解してもらえたと思いますが、それでも、なぜロジカルシンキングがそれほど重要なのか納得できないという方もいると思います。以下では、ロジカルシンキングのメリットを紹介します。 

コミュニケーションが良好になる 

ロジカルシンキングのスキルが向上すると、誰とでもコミュニケーションが取れるようになります。自分の主張が相手に理解されやすくなり、かつ相手の主張を理解しやすくなります。 

ロジカルシンキングができないと、長年付き合いのある相手としかコミュニケーションが取れませんが、ロジカルシンキングができれば、初めて会った相手とも論理という共通の言語を介してコミュニケーションを取ることができます。 

コミュニケーションが良好になる、つまり相手との意思疎通がうまくいくということは、そのままストレスの軽減にもつながります。曖昧な言い方によるミスコミュニケーションを防ぎ、行間を汲み取るというある種の”判断”の手間を無くします。 

問題発見能力が向上する 

”対象を要素に分解する”ことや”フレームワークを使う”こともロジカルシンキングの重要な要素です。これらができることで、問題発見能力を向上させることができます。 

上述したように、”なぜ商品の販売台数が落ちているのか”という問いに対して、全く白紙の状態から正しい答えを導くのは容易ではありません。そう言った時にロジカルシンキングをすることで、問題発見の筋道を得ることができるのです。 

問題解決能力が向上する 

ロジカルシンキングは、問題解決能力の向上にもつながります。ロジカルシンキングができなければ、発見された問題に対してどのようなアプローチを取るかを考える際に、”過去の経験”と”思いつき”だけが頼りになります。しかし現実には、過去と同じことを繰り返すだけでは対処できない問題がたくさんあり、また思いつきが常に最良の解決策を導くわけではありません。 

そのようなケースで、ロジカルシンキングにより様々な視点から分析することで、それまで見えていなかった解決策を発見することができる可能性があるのです。 

意思決定が早くなる 

ロジカルシンキングは、意思決定のスピードを上げます。ビジネスは日々意思決定の連続です。その意思決定は、直感で決められることももちろんありますが、日常的にはロジカルシンキングがベースとなります。ロジカルシンキングを用いて意思決定することで、曖昧さを極力排除し、思考の筋道を明確にし、人族に意思決定することができるようになります。 

ロジカルシンキングが幸福度を向上させる 

ここまで、ロジカルシンキングの概要やメリットについて纏めました。ここからは、ロジカルシンキングがどのように私たちの幸福度を高めてくれるのかについて書きます。 

ロジカルシンキングに必要な”感情” 

まず準備段階として、ロジカルシンキングと感情の関係について考えて見ます。ここまで読んできても、”ロジカルシンキング”という言葉に抵抗感を持つ人にとっては、冷たい印象が拭えないのだと思います。これはある意味、これまでのロジカルシンキングという言葉の使い方や、意味の伝えられ方が偏っていたからと言えるでしょう。つまり、ロジカルシンキングというのは、感情を抑制して論理だけを重要視することのように受け止められてしまっているということです。 

ここで、論理と感情の関係を整理しましょう。まず理解しなければならないのは、感情は論理に先立つということです。つまり、人間にとって感情がなくて論理だけが存在するというのはあり得ません。人間はまず何らか感情を抱き、それを言語化し、相手と円滑にコミュニケーションするために論理に落とし込みます。決して逆では無いのです。 

ですから、まず感情がなければ何も始まりません。その感情を最大限活用するために、論理があるのです。論理的思考(ロジカルシンキング)にしても、感情を排した冷たい思考と捉えるのではなく、感情と論理は共存するものだと捉えるべきです。 

もちろんロジカルシンキングの過程で、当初自分の中に生まれた感情と違うところに着地した、と思う瞬間もあると思いますが、それはあくまで論理を使って感情と向き合った結果であって、感情を排して論理だけで結論に至ったわけでは無いのです。 

ロジカルシンキングに対して抵抗感を持っている人も、感情と論理という二項対立で捉えるのではなく、必ず存在する感情というものと不可分なものとして論理を捉えることで、ロジカルシンキングを受け入れやすくなるのではないでしょうか。 

とはいえ、感情だけでは回らない 

上で述べたように、感情は論理に先立つ存在であり、感情と論理は不可分です。ロジカルシンキングが重要だからといって、感情を排除しなければならないわけではありません。 

とはいえ、感情が常に前面に出てきていては、やはり円滑なコミュニケーションが阻害されたり、問題発見・解決ができなかったり、意思決定プロセスに時間がかかってしまう要因になります。 

例えば、仕入れ元からの納品が遅れそうで、希望納期に間に合わせて欲しいと伝えるケースを想定しましょう。”販売先から毎日催促を受けていて、早くしろと言われていまして、本当に辛い状況なんです。御社も大変な状況なのは重々理解しているのですが、何とか急いでもらえないでしょうか?”と伝えたら、先方はどう感じるでしょうか?丁寧なのはわかりますが、困っているから早くして欲しいという感情の部分ばかりが伝わって、肝心の希望納期がいつなのかがわかりません。それよりも、シンプルに”販売先の希望を叶えるために、何とか来週月曜の午前中までに弊社倉庫に納品をお願いします”と言った方が、要求が相手に伝わります。 

上の例で伝えたかったのは、感情と論理は共存できるとはいえ、感情は使いところが重要ということです。では、感情と論理をどのような関係性で捉えるべきなのでしょうか。 

感情を論理でラップする 

感情と論理の共存のための発想として、”感情を論理でラップする”ということをお勧めします。上で感情がなければ論理もないという話をした通り、まずは感情が必要です。ここでは感情を情熱と言い換えてもいいです。 

あなたが情熱を持って、何かを成し遂げたい時に有効なのが、まさに論理であり、ロジカルシンキングなのです。あなたの情熱の対象について、いかに合理的なのかを説明できると、相手に納得してもらえると同時に、あなたの情熱も相手に伝わります。これをここでは、”感情を論理でラップする”と呼んでおきましょう。 

論理が生み出す、満足度の高い職場環境 

感情を論理でラップできるようになると、上手に感情と論理を共存させられるようになり、あなたにとっても、相手にとっても満足度の高い結果になりやすくなります。あなたは自分が情熱を持っているものについて相手を説得できる可能性が高まるし、相手からしたら筋が通っていてかつ情熱を感じる内容であれば、合意しやすくなるからです。それが上司であれば、承認しやすくなることになります。同時に論理がきちんと構築されていれば、コミュニケーションにかかる時間も最小限で済みますから、自分にとっても相手にとっても、無駄な時間を割くことがありません。 

このように、感情を論理でラップすることができると、あなたはより職場で自己実現ができるし、対人コミュニケーションに起因するストレスや時間を削減できます。このような職場は、満足度が高い職場となるでしょう。そして、このような満足度の高い職場を達成できれば、自然とあなたの幸福度は高まります。これが、ロジカルシンキングが最終的に幸福度を高めてくれるということです。 

ロジカルシンキング習得方法 

ここまで、ロジカルシンキングの概要、メリット、そしてロジカルシンキングが満足度、ひいては幸福度の向上につながるという話をしてきました。では実際にロジカルシンキングを習得するためには、どんな方法があるでしょうか。以下では大きく2つの方法を紹介します。 

教材による自学自習 

ロジカルシンキングはビジネスの基本中の基本です。そのため関連する書籍も数え切れないほど出版されているし、紙の本でも電子書籍でも、また難易度も易しいものから難しいものまで、多くの種類の教材があります。是非複数手にとってみて、まずは興味を持って読めそうなものを1冊読んでみるところから始めるのが良いでしょう。 

研修やスクールに参加する 

もし自習がひと段落している人や自習が苦手な人は、社内研修や社外スクールに参加するのも有効な手段です。ロジカルシンキングを鍛える講座の多くは、グループ形式で答えの決まってない問いに対して筋道を立てて考え、講師からフィードバックを受けるような形式が多いです。この方法だと、普段は気づかない思考の癖に気づけたり、他の人の発言から多くを学ぶことができ、大変有益です。 

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