第1次AIブーム / 人工知能の歴史

AI/データサイエンス

前回はAI・人工知能の歴史を概観しました。

今回は前回の記事の中でも言及した第1次AIブームについて詳しく解説します。

スポンサーリンク

第1次AIブーム

AIの領域で初めてブームと呼べる状態が訪れたのは、1950年代後半から1960年代第1次AIブームです。この時期には後述の”推論“や”探索“の研究が進みました。パズルや迷路を人間よりも早く解けるようになった反面、現実の複雑な問題に対してはまだまだ有力ではなく、徐々にブームが去っていきました。

スポンサーリンク

推論と探索の時代

ここで、第1次AIブームで研究の進んだ”推論と探索”というアプローチがどのように問題を解くのか、またそのアプローチによってどのような成果がもたらされたかを説明します。

推論と探索の基本的なアプローチ(探索木)

探索木というのは、迷路の問題を解く際のアプローチです。たくさんの選択肢を複数回選び、その中で正解にたどり着く経路が1つしかないときに、場合分けによって正解にたどり着くというものです。

人間と同じように、迷路において行き止まりに到達した1つ手前の選択肢まで戻って探索を続けるようなアプローチを”深さ優先探索“と呼びます。深さ優先探索では1人の探索者だけで必ずゴールにたどり着けますが、場合によっては非常に長い時間がかかります

一方、必要に応じて探索者を無限に増やせるイメージで、選択肢において両方の道を同時に進んでいくようなアプローチを取るのが”幅優先検索“です。幅優先検索はすべての経路を同時に探索できるので、必ず最短でゴールにたどり着くことができますが、複雑な迷路ほどメモリ不足に陥りやすくなります。直感的に説明するなら、探索隊のメンバーが増えすぎてしまう、という感じでしょうか。

もし図解を見たいという方は、こちらのサイトで詳しい説明がありますので、ご参照ください。

第1次AIブームで中心的な役割を果たした「探索・推論」について (kenyu-life.com)

ハノイの塔

ハノイの塔も、探索木(場合分け)を用いて解くことのできる問題です。ハノイの塔とは、以下のように3本のポールと3つの円盤を想定し、円盤を1枚ずつ別のポールに移動させ、一番右側のポールに移動させることをゴールにしたパズルです。条件として、小さな円盤の上に大きな円盤を乗せてはいけない、ということになっています。

この問題も、場合分けをすることで最短コースを達成することができます。ご参考まで、最短コースは以下の通りです。

ロボットの行動計画

行動計画を自動で行うための人工知能も多く研究されました。その代表的な例がSTRIPSSHRDLUです。

STRIPS

STRIPS(Stanford Research Institue Problem Solber)は、1971年に開発された自動計画のための人工知能です。STRIPSはInit(初期状態),Goal(目標状態),Actions(行動)から構成され、Actions(行動)はPreconditions(前提)とEffects/Postconditions(結果/事後)が含まれます。

例えば、前提が”汚い部屋にロボットがいる”だとして、行動を”清掃”とし、結果を”綺麗な部屋にロボットがいる”とすることで計画された掃除を実行できる、といったイメージです。

SHRDLU

SHRDLU(由来はetaoin shrdlu)は1968年から1970年にかけて、テリー・ウィノグラードによって実施された人工知能の研究プロジェクトです。SHRDLUでは、積み木がたくさん置いてある部屋を想定して、その環境下で文章による会話を成立させることに成功しました。

積み木には立方体のもの、四角錐のものなどがあり、コンピュータに対して英語でどうやってテーブルの上に緑の立方体、そしてその上の赤色の四角錐を置いたのかを教えてくれと問い、コンピュータが簡単にその方法を答える、といったやりとりをしています。

非常に限定的な環境とはいえ、自然言語(人間が使う言語)による自然な会話が成立したことが大きな成果となりました。ここでの研究成果は、のちに第2次AIブームの記事で説明するCycプロジェクトにも引き継がれます。

トイ・プロブレム

推論と探索のアプローチのように、本質を損なわないようにしつつ問題を簡略化して考えることトイ・プロブレム(おもちゃの問題)と呼びます。当初は、ルールとゴールが明確になっている問題をAIが解けるという文脈でしたが、AIがトイ・プロブレムしか解くことができず、現実の問題に対応できないと認識されるようになってからは、ネガティブなニュアンスを含むようになりました。

第1次AIブームの終焉

推論と探索によるAI研究の成果は大きかった一方で、その限界も露呈しました。パズルや迷路は解けても、現実世界の複雑な問題は推論と探索では解決できず、企業の経営に大きなインパクトを与えることができなかったこともあり、ブームは下火になっていきました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました