今回は、著者がこれまでに携わった業務改善コンサルティング案件から事例紹介をします。今回ご紹介するのは、業績データをタイムリーに集計したいというご要望に対応したケースです。
現状把握
今回のケースは、ある大企業の業績を管理する部署からの依頼でした。業務としては、毎月月末の最終日に、その時点で売上額がどのくらい計上されているのかを確認するという業務です。ERPシステム上で売上計上処理からタイムラグ1時間ほどで最新の業績数字が確認できるので、主に昼から夕方にかけて複数回、そのシステム上の最新の業績数字を確認します。こうすることで、その月の業績の着地点を見極め、経営幹部に報告する、という業務でした。
当時の業務プロセスとしては、作業する時間になったらERPシステム上の最新の業績数字を確認する画面にログインし、細かな検索条件を入力して、その結果をtsvファイルで出力。その後そのtsvファイルを経営幹部が見やすいようにExcelで集計し直し、体裁を整えてから配信する、という流れでした。1回の作業に30分ほどかかり、それを複数回実行するので、合計で1-2時間かかる作業です。
プロセスがしっかり確立されている一方で、課題はシステム上の単純作業が多く、かつExcelの再集計に手間がかかるという点でした。
解決策
今回のケースでは、上記の一連のプロセスすべてを自動化してしまうことをターゲットとしました。
ERPシステム上の作業
まずERPシステム上での単純作業の自動化を検討します。具体的には以下のような作業です。
- システムへのログイン
- 検索条件の設定(年月日,商品,注文主,部門)
- 検索結果の表示
- tsvファイルへの出力
これら業務をつぶさに見直すと、すべて機械的な作業で、人間の判断が一切必要ないことがわかりました。そこで、これら作業はRPA化する方向で進めました。
Excel再集計の作業
Excel上の作業は、具体的には集計単位の変更が必要でした。これは例えば、元データでは”東京”・”神奈川”・”埼玉”という区分になっているデータをすべて”関東”として集計するというような作業です。こういった作業をそれまで手作業で1日に何度も行っていたというのは驚きでしたが、この作業も全く人間の判断が不要でしたので、こちらはVBAで自動化する方向で進めました。
運用開始
今回は他の部門を巻き込まない業務でしたので、他部門との合意形成をする必要がなく、円滑に進めることができました。
ツールの作成
ツールは、RPAをベースに作成しました。RPAは導入コストが非常に高いですが、すでに会社としてUiPath社のRPAソフトを導入していたこともあり、追加費用なく使用できました。Excel上の作業はVBAを作成し、RPAのフローの一部でそのVBAが入ったbatファイルを実行することで、一気通貫の自動化を達成できました。
作業者としても、ボタンを1回押すだけで、あとはパソコンを放置しておけば数分で作業が完了します。これによって大幅に業務が改善されました。
運用開始後
運用開始後も、UiPath社のRPAは定期的に改修・修正が必要なので、全く作業不要とはなりません。RPAが動かなくなった場合にスポットでアフターフォローを実施します。
コメント